写真に示したのは、1944年にオランダから発行された10セント銀貨で、ウィルヘルミナ女王の横顔が描かれている。
時代は第二次世界大戦の真っ只中であり、オランダはドイツの占領下にあったため、国内で正常な通貨発行ができなかった。そのため43年から45年にかけては米国の協力を得て、米国内の鋳造所(サンフランシスコ:S、フィラデルフィア:P、デンバー:D、アルファベットはコインに刻印されるミントマーク)で通貨の製造を行ったのである。
右側の写真の年号の刻印1944の右下にミントマークが見える。Sのように見えるが、よく見ると、Pの上からSが刻印されている。
本品はS/P(S over P)と呼ばれるもので、製造過程のエラーによりフィラデルフィアで鋳造されたコインに、サンフランシスコで再びミントマークが刻印されたものである。SとPが重なったミントマークがリスに似ていることから、「リス(Squirrel)」とも呼ばれている。このコインが戦時中に鋳造されたという歴史的意義と、ミントマークが重なったというユニークなエラーのため希少なコレクターアイテムとなっている。
Heritage Auctionの本銘柄の説明文にある、「deceivingly scarce (coin, date, issueなどに修飾される)」とは、発行枚数が多いのに、その見かけによらず市場に出回らないコインのこと。1944年の10セント硬貨全体の発行枚数はSが約6400万枚、Pが約1.2億枚、Dが2500万枚と非常に多かったが、戦時中で使用されずに散逸、溶解されたり、さらにはそのうちのごく少数がS/Pのエラーによって希少性が高くなり、「deceivingly scarce」と呼ばれているのである。
カタログでは鋳造枚数2枚との表記がある。ただし、PCGS鑑定では全7枚(正確には7回という意味であり、同じコインが複数回鑑定に出されることがあるため、回数が残存枚数を表すわけではない)存在しており、数が少ないことは確かだが、正確な枚数は不明である。
NGCプライスガイドでは、MS63で$5000と高く評価されている。
Netherlands 10 Cents KM 163 Prices & Values | NGC (ngccoin.com)
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