レアコイン紹介:ローマ帝国 Titus デナリウス銀貨 RIC系統の新種

今回はこちらが所蔵している古代コインを紹介いたします。

■ 基本情報
皇帝:Titus(在位 AD79-81)
額面:AR Denarius(銀貨)
重量:約3.37g
※古代メッキ貨の可能性あり
鑑定:NGC Ch XF(Strike 5/5, Surface 2/5)

■ 特徴
・表面:左向き肖像(通常は右向きが主流)
・裏面:Ceres seated 左向き
左向き肖像+左向きケレスの組合せは極めて稀

■ NGC鑑定の解釈
• Strike 5/5 → ダイ状態良好
• Surface 2/5 → 表面減点
• “perhaps plated” → 「銀メッキ貨(サブアエラート)の可能性があるが、断定はできない」の意
→本個体は、 エッジ:問題なし、フィールド:自然、摩耗部:銀維持、クラック:一体構造
→メッキの可能性低い(確証はXRF分析が必要)
本個体の本質的価値は、金属組成よりもこの極めて稀なダイ組合せにあり、フラウィウス朝貨幣の中でも特筆すべき一枚
•重量正常 → 偽造リスク低

■ 総合評価
極稀タイプRIC23系統(下記写真参照、レア度R3)に属するコインであり、さらにこれまで5種類確認されている既知例とダイ不一致の可能性が高い。
研究対象レベルの希少コイン。

さて、ここで気になるのが、同年代(AD80)のTitus金貨(Aureus)ダイ=左向きバストとの関係です。写真のように、上記のDenariusの左向きバストと刻印が似ています。

結論
👉 「同一ダイではない」 しかし、「同一彫刻モデル(=Aureus由来の肖像)」の可能性は極めて高い

① “同一ダイか?”の判定
同一ダイなら必ず一致する要素:
レジェンド文字の位置(1文字単位)
ビーズ(周縁点)の間隔
首元のラインの微妙な歪み
パンチの欠け・傷
■ 比較結果(左向きバストのDenarius vs このAureus)
明確に違う点
レジェンド配置:Aureus:文字間が均等で広め vs. Denariusやや詰まり気味
首の付け根(超重要):Aureus:滑らかで丸い vs. Denarius:やや角張る
👉 彫刻ストロークが違う
リボン(後頭部):Aureus:細く長く流れるvs. Denarius:やや短く簡略
額〜鼻のライン:Aureus:非常に滑らか(理想化) vs. Denarius:やや強調(輪郭強い)
■ 判定
👉 完全一致要素なし、よって、同一ダイ説は否定

② それでも「似すぎている理由」
■ 一致している要素(かなり重要)
鼻の角度(かなり特徴的)
顎の張り
目の位置関係
月桂冠の構成
頭部全体のプロポーション
👉 これは偶然ではなく、明確に“同一デザイン系列”
■ 最有力解釈
「Aureus用の肖像モデルをベースに、Denarius用に再彫刻」
「ローマ造幣では:金貨=公式肖像の“マスター”、銀貨=その展開」という構造に完全に一致
■さらに本品デナリウスについて、
Strike 5/5=輪郭がシャープ
👉 通常デナリウスより“金貨寄りの彫刻品質”
■ このDenariusの再評価
この事実を踏まえると、単なるRIC23ではない
従来:「左向きバリエーション」
修正後: 「Aureus肖像系統を持つRIC23」
■価値への影響(かなり重要)
このストーリーが成立すると、コレクターの評価軸が変わる
通常RIC23→レアだが“変種”
本品「上位額面(Aureus)との設計リンク」→“体系的に重要な個体”
👉 「金貨デザインを受け継いだ異常デナリウス」